[本記事の要点]
・ Scrapboxを用いた「思考の整理学」 の「情報のメタ化・整理・忘却」を現代風に実践してみる
・ 紙媒体からデータ媒体とすることで、データ移管・関連付けの手間が大幅に減少
・ 効率的にScrap boxで記録整理をおこなうためにフォーマットを考えた
・ Scrapboxを用いた「思考の整理学」 の「情報のメタ化・整理・忘却」を現代風に実践してみる
・ 紙媒体からデータ媒体とすることで、データ移管・関連付けの手間が大幅に減少
・ 効率的にScrap boxで記録整理をおこなうためにフォーマットを考えた
現代のITツールを活用した「思考の整理学」
「思考の整理学」とは、今から30年以上も前に出版された本ですが、現在のビジネス書のいたるところに本書の要点を見ることができます。
特に「知的生産」「独創的アイデア」などのキーフレーズがタイトルにつくビジネス書には(著者が意図したかわかりませんが)必ずと言っていいほど、「思考の整理学」のエッセンスが含まれているように思えます。
1986年に発売されて以来、今もなお人々の勉強や研究などの知的活動に大変良い「気づき」を与えてくれる良書で、私の知的活動のバイブルといっても過言ではありません。
本書が提唱する内容は、現代でも十分活用でき、素晴らしい知的活動のためのヒントをもたらしてくれると確信しておりますが、あえて一つだけ問題提起をしたいと思います。
それは、本書に示されている情報収集・記録の整理がほとんど「紙ベース」のいわばアナログな方法が提唱されていることです。
例えば、新聞・雑誌の切り抜き(スクラップ)や、手書きノートの作成です。
書籍の執筆から30年あまりの年月が経ち、今や時代は「IT・テクノロジー」が主流となりました。
手帳はスマートフォンに置き換わり、今やノートはパソコンで作られクラウドサービスを利用すれば、どこでも・どの端末からでも確認できるという時代になりました。
今の私たちは新しくて便利なツールが無料で使えます。それらを駆使して、この「思考の整理学」の中で提案されている「情報のメタ化」や「情報の整理・忘却」を行うにはどのサービスがいいのか?
試行錯誤を試した結果、行きついたのがこの「Scrapbox」です。
Scrapboxとは
Scrapboxとは、無料で使えるノートサービスでGoogleアカウントがあればだれでもすぐに使うことができます。
今現在様々なノートサービスがあり、例えば「Evernote」、Googleの「Google Keep」やMicrosoftの「OneNote」などそれぞれ独自の強みがあります。
Scrapboxがこれらのノートサービスと大きく異なる部分は、ずばり「リンク機能」にあります。
このリンク機能を用いることで、時系列・内容として断片的だった情報がつながり、自分だけの「知識ネットワーク」が形成されていきます。
Scrapboxの基本的な使い方
ここでは、Scrapboxの基本的な使い方を説明いたします。
Scrapboxの表示画面は以下のようなシンプルなものです。
- 行頭にスペースまたはタブを入れて段落を作ることができます。
[ ]
で囲むと[別ページ]への[リンク]になります。#
のあとに書いた文字は #ハッシュタグ になります。動作はリンクと同じです。[ ]
の中にGyazoなどの画像URLやYoutube/Vimeoの動画URLを書くと画像や動画を表示できます。
例:
リンクの効果的な使い方
[Scrapbox]は、[リンク]機能を用いてノート同士につながりを作ることで、関連するものを見つけ出し、整理できるのが特長です。
[読んだ本]、[人物]、[タスク]などリンクやハッシュタグが作られ、その関連ノートの一覧を見ることができます。
リンクはScrapboxのページ下部に表示され、別ページや[]で囲んだリンク一覧と、そのリンク内のページ一覧が表示されます。
「思考の整理学」の要点
『思考の整理学』とは筑摩書房から出版されている外山滋比古氏の執筆した文庫本で、1986年に第一版が発行されて30年以上経った今なお読まれ続けている有名な一冊です。本書の中で上質で独創的な思考の形成や知識の収集には、ただ漠然と情報をかき集めるだけでは不十分で、その情報を最大限活用するための「整理術」として以下のステップを紹介しています。
- 収集(インプット)
- 情報の手入れ
- 忘却および選別
- 体系化(メタノート化)
- 発表(アウトプット)
「思考の整理学を用いたブログ記事の書き方」についての記事も、要点と実践方法を理解する一助となると思います。
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Scrapboxを用いた「思考の整理学」 メタ化の手順
それでは、実際にScrapboxを用いてどのように情報のメタ化を行うのかについて紹介していきます。
本書では、スクラップ、読書ノート、手帳メモで情報を断片的に記録・収集し、一度記憶から忘れさせた後でもまだ輝きを保っているアイデアを抽出・整理したものを「メタノート」へとまとめるという手順を紹介しています。それをScrapboxで行う場合に、どのようなツール・デバイス・機能を使えば効率よく行えるのかを紹介していきます。
思考の整理学では、メタ化の手順として以下の4ステップを紹介しています。
- スクラップ
- カード・ノート (読書ノート)
- 手帳とノート
- メタノート
書籍では、各ステップごとに異なる記録媒体を用いており、思考の整理・成熟が進み「メタ化」されるとメタノートに写しかえるという作業を行っております。
ここでは、各ステップを一括してScrapboxに記録・整理するために
- 目的
- 記載項目
を紹介します。
「思考の整理学」との対応をわかりやすくするために、各項目は本書で用いられている表現をそのまま示しております。
出典: 思考の整理学 : p81, 87-88, -108
『思考の整理学』に書かれていることをScrapboxで置き換える
以下ではそれぞれ、「思考の整理学」中の記述と、Scrapbox(デジタルツール)を用いた置き換えで、記録媒体・記録媒体の種類・データの移動方法・データの整理方法の4つの観点から比較したものです。
項目 | 思考の整理学 | Scrapbox(デジタルツール) |
記録媒体 | 紙ベース | データベース |
記録媒体の種類 | スクラップノート / 読書ノート / 手帳・メモ | PC / スマホ |
データの移動方法 | その都度書き写す、印刷コピーしてノリではりつけ | オンライン上で同期、記録媒体間の移動の必要なし |
データの整理方法 | 索引を作成、ページ番号を記録 | リンク機能 |
こうして比較してみると、現在のツールを活用すれば様々な手間を省くことができそうですね。
1. スクラップ・カード・ノート (読書ノート)
目的
断片的な情報の収集
読書や雑誌記事などスクラップできないものを記録する
記録項目
- 出典(掲載の新聞・記事・書籍・雑誌名(月号)の記録)
- URLを張り付ける
- 日付を記入する
- 書籍のカバーページを撮影 (イメージで思い出すため / 一覧から一目でわかるため)
- イメージ情報はスクリーンショットをとって張り付ける(イメージで思い出すため / 一覧から一目でわかるため)
- Scrap boxに画像としてアップロード、Scrap boxページにそのスクラップ情報について一言書いておく
スマホからScrapboxへ画像アップロード
スマホで撮ったスクリーンショットや本のページは、スマホからScrapboxにあげることができます。スマホからScrapboxを表示したのちに、画面右上に青のバーをタップしてメニューを表示させます。そのうちの、「Upload Image」を選択すると、写真フォルダーからアップロードすることができます。
スマホで撮ったスクリーンショットや本のページは、スマホからScrapboxにあげることができます。スマホからScrapboxを表示したのちに、画面右上に青のバーをタップしてメニューを表示させます。そのうちの、「Upload Image」を選択すると、写真フォルダーからアップロードすることができます。
さらに上質な読書記録としては以下の情報も一行ずつ書いています。
・読書して得た知識 3つまで
・著者のバックグラウンド
・感想
・読書して得た知識 3つまで
・著者のバックグラウンド
・感想
2. 手帳とノート
目的
瞬間的に思いついたアイデアを記録して一時的に寝かせる(忘れさせる)ため
記録項目 (手帳)
- 日常生活の中のアイデア
- 思いついた日付
手帳のかわりに、可能ならスマホで記録をメモを残します。一度記録しておいて、時間ができたときに「スクラップ」または「読書記録」としてリンクをつけてScrapboxに保存します。
スマホの「ボイスメモ」機能も、短時間にすばやく記録ができるのでお勧めです。
3. メタノート
目的
「スクラップ」「読書記録」のリンクの中でひと眠りして、まだ活きているもの
記録項目
- 見出し
- 一次記録の内容
- 日付 (ノートへの移動日)
- 各記事へのリンク
- 関連のある新聞や雑誌のリンク
Scrapboxを用いているために、「情報を別のノートに清書して書き写す」ということが必要なくなりました。さらに、リンク機能を用いることで、コピー&ペーストをする必要もありません。
メタ化した情報にタイトルを与えて、Tag:として「メタノート」を追加するだけで完成です。
Scrapboxでメタ化するためのルール
効率的なScrap boxでの記録整理をおこなっていくためにはルール・テンプレート化が重要です。
これに従うことで、その情報がどのような属性(スクラップ・読書記録・メタノート)を持つのか、そしてそれを記入した日付や引用元を漏らすことなく記入できます。
このように整理することで、長い忘却を経た後でも、再びその資料に行きつけるようになるのです。
記録テンプレート
- 1行目:Date(日付)
- 2行目:Tag(タグ)
- 3行目:Ref.(出典・参考資料・URL)
- ページ下部:リンク(Scrapboxのデフォルト)
General Tag(タグ)
情報の種類を表すために以下のTagを記録しておきます。
- [スクラップ]
- [読書記録]
- [メタノート]
最後に
本記事ではScrapboxを用いて「思考の整理学」の「情報のメタ化・整理・忘却」を現代風に実践してみることを目指しました。
30年前には主流であった紙媒体の記録からデータ媒体とすることで、データ移管・関連付けの手間が大幅に減少してより効率的にデータを集めることが可能となりました。
その一方、記録できる情報量が多くなりすぎたため、効率的なScrap boxでの記録整理をおこなっていくために定めたルールも併せて紹介しました。
本記事で紹介した方法は必ずしもScrapboxを用いずとも活用できますが、「リンク機能」により自分だけの「知識ネットワーク」が形成されていくのはとても美しく感動します。
少しでも「知的活動」に興味を持たれたら、是非試してみてください。
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