近年の人工知能の飛躍的な発達により私たちの生活の様々な面で変化が起こり、またこの先劇的に変わろうとしております。人工知能(AI)の活躍のニュースの裏で必ずと言っていいほど耳にするのは、近い将来人工知能やロボットにより職を失われる人が出てくるという、勤務形態の変化です。これらのニュースで非現実的なのは、IT技術のみが進歩した未来を考えており、それ以外の項目は現在の状態を維持しているという立場にある考察です。この問題について思い切った議論をするために、AIが十分に発達した数十年後の 日本の未来と人工知能 との関わり方について想像したいと思います。
AIの発展は脅威か、それとも必然か?
ある論文では、 今後数十年のうちに人工知能の発達により、現在の仕事の50%が人工知能・ロボットに代替されるという衝撃的な発表がありました。数十年先と聞くと遠い未来のように感じますが、今現在会社では若手の20代の人たちも数十年後には40代50代と社会の中心を担う年代となっております。若い頃の下積みを十分に経験し、いざこれから自分たちの時代だ、という働き盛りの2030~4-年にはこのIT革命による変化は無視できないものとなっているでしょう。もしくは今の予想よりもずっと早くに IT革命による業務の革新が行われるかもしれません。
2017年のニュースでは、大手銀行員の大幅な人員削減、電話交換手の完全機械化など従来人間が行っていた作業が徐々に人工知能に取って代わられるというニュースが見受けられます。
このような報道やニュースを聞くと、 IT 革命がもたらす恩恵以上に、現在の生活が脅かされてしまうという危機感の方を強く持ってしまいがちです。そういう私もその一人で、このAI ブームに取り残されないように独学で人工知能を学ぼうと様々な取り組みをしております。
しかし今回この記事で紹介したいのは、今後数十年後の日本において人工知能による業務の代替が行われないと日本経済が成り立たない、 我々自身の生活を守るために積極的に人工知能を活用していく、という未来があるのではないかというひとつのモデルケースを紹介したいのです。
日本人総人口の減少と高齢化
ところで話は変わりますが現在の日本の人口は何人でしょうか。2015年発表の国勢調査では総人口が約12700万人となり、5年前の前回調査に比べて約963000人減少しました。また2016年の年間出生数が初めて100万人を割り込んだことも衝撃的なニュースでした。人口統計資料集ではこの後の日本の総人口の予測についても発表しており、40年後の2060年には900万人を下回り日本の総人口は100年もたたないうちに5000万人ほどに人口は減少してしまいます。
このデータはあくまで近年の人口の推移に基づく予測ですが、いずれにせよ日本の総人口は今後減少していく方向であるということは疑いようがありません。
この総人口の減少に反して、高齢者人口は今後増加していくことが予想されております。最近のニュースで言えば、「人生100年計画」や「長期雇用」、「75歳定年」など高齢者の積極的な社会参画を促す政策を耳にします。
これらの傾向から今後数十年の労働人口は、全体的に減少しかつその構成も高齢者の占める割合が高くなり、20代から30代の労働人口が比較的少ない逆ピラミッド型の労働人口構成となるのではないかと予想されます。
人口減少で日本の未来に何が起こるのか、そしてその確実に訪れるであろう未来に対して私たちはどのように備える必要があるのか興味がある人はこの書籍が非常に参考になります。
労働人口の減少と競争力の維持・強化
このように労働人口が減少した近未来では、企業では十分な労働力の確保が行えず、今まで10人でやっていた仕事を数十年先では3人で回す必要があるかもしれません、またその3人のうち二人は60歳以上の現在であれば定年を迎えるはずの高齢労働者かもしれません。
以下の年齢別の労働人口の将来推移を見てみると、30代~40代までの労働人口の減少が顕著に表れております。それと対称に50代~60代以降までの労働人口は増加しております。数十年後には、労働人口の多数層が50代~60代に遷移することが予想されます。
続いて別の角度から、将来の労働力の推計について見てみましょう。以下のグラフは年齢別の労働力率を表したグラフです。男性は一般的な労働期間である25歳から60歳までの労働力率は将来的にも大きく変わりはなく最も高い水準を維持しております。しかし定年後の60歳以上の労働力率は、2020年、2030年と進むにつれて増加していきます。これは雇用期間の延長や定年の延長など最近の取り組みから見られるように、高齢者の労働力が不可欠な未来に向かっていることの表れであると思います。
続いてつまり今現在若手の20~30代の我々が年齢を重ね、従来であれば定年を迎えられた2060年でも、高い労働力率を示す必要があるかもしれないということです。
そのような労働環境の変化した近未来においても、会社は競争力を保ち続けなければなりません。しかも競争相手は国内の企業のみに限らず、海外の同業他社、もしくは今はまだ発展途上の国の企業が急速に成長してくるかもしれません。
そんな中で競争力を維持し続けるためには、以下の3つの方法が考えられます。
1番の個人に頼る方法は、一番の理想ですが人間が数十年で劇的な能力の飛躍や進化ができるとは思えません。
2番目の日本国外からの労働力を活用するのは、現在でも介護分野や技術分野で外国人実習生の受け入れなどを行い、国外からの労働力の確保を行っております。しかしこれも、海外から比較的安価な労働力をされている場合に成り立つ方法であり、将来これらの国が発展し労働者一人当たりの賃金が上昇した場合にこの方法は破綻します。
そこで最後の AIを用いた業務効率の改善です。
日本の未来と人工知能 ・ロボット
従来我々が行ってきたような事務的な処理や単純作業を人工知能に処理してもらうことにより、生まれた時間をよりクリエイティブな(厳密には過去に事例のない、新規の取り組み)事業に時間をかけることができるようになります。例えばビッグデータと人工知能を用いた医療診断技術が発展したり、我々の身近なところではスマートフォンやPCでのサービスにもAIの搭載がうたわれています(厳密にはAIといっても、機械学習を行うものや、我々の暮らしを支えるITツールなど様々ですが、ここでは細かく分類していません)。
これにより少ない労働力であっても 、競争力を維持、もしくは更に発展させることが可能になるかもしれません。人口減少により足りなくなった労働力を、AIやITツールによるサポートで補填させ、我々一人ひとりの知的労働時間を十分に確保するということが狙いです。
またロボットアームやロボットスーツなどの人体の外部デバイスとして用いることで、高齢者でも自身の体の衰えに関係なく業務をこなすことができる未来が訪れるかもしれません。現在でも医療用や業務支援用のロボットスーツが開発・販売されております(CYBERDYNE HP)。まだ、庶民が気軽に買える商品ではありませんが、数十年先にはこのロボットスーツにより補助がスタンダードになっているかもしれません。
我々の生活は現在既に外部デバイスに依存した生活を送っていると言えます。例えば、スマートフォンやPCなどの小型携帯端末です。昔は、電話番号を十数個覚える必要がありましたが今では携帯に全ての情報が保存されております。これは脳記憶を外部デバイスが補助している、という風にも捉えられないでしょうか。
私が想像するに、この先少しずつ様々なデバイスやAIが少しずつ人間の機能を補助して、我々の暮らしを便利に、そして身近になくてはならないものになっていくのだと思います。
最後に:労働から解放された未来?
究極的には、 生産活動や技術的な興味が全て人工知能ロボットに代替された場合は、人間は従来の労働から解放され、古代ギリシャの賢人たちが行ったように、美術や学問を極めたりそれぞれが思うがままの自己探求・知的探求の生活を送れるかもしれません。
話はそれましたが、本記事で伝えたかったのは、人工知能は我々の生活を奪うものではなく豊かにするものであるという考え方です。それは、人口が減少した近い未来においてはこの人工知能やロボットを最大限活用する社会でなければ、現在の継続的な成長が破綻してしまう恐れがあるため、我々は IT 革命を積極的に推進する必要があるのだと思います。
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