トラベラーズノート は、シンプルながらもカスタム性の非常に高い手帳・ノートで永く使っていくと革カバーの経年変化もあいまって、その人だけのオリジナルの一冊が出来上がります。しかし、自由度が高すぎても、どのように使用するかで迷ってしまいます。具体的にはスケジュール管理として使うか日記として使う、普通にメモとして使用するのか。本記事では「 トラベラーズノートの活用術 」として私が実践している「思考の整理学」的整理術を紹介したいと思います。
思考の整理術 本質は忘れること
『思考の整理学』とは筑摩書房から出版されている外山滋比古氏の執筆した文庫本で、1986年に第一版が発行されて30年以上経った今なお読まれ続けている有名な一冊です。
本書の主張は一貫して「自ら学び続ける人間になるためには」という目標があります。その「学び」の一側面として、「整理術」についても記述されております。上質で独創的な思考の形成や知識の収集には、ただ漠然と情報をかき集めるだけでは不十分で、その情報を最大限活用するには「整理術」が必要なのです。
整理術の本質は「忘れること」であり、面白いと思ったアイデアを忘れて時間という波に揉ませることにより、そのアイデアの「選別」「熟成」「発酵」を行っているのです。
この整理術には、以下の5つのステップがあります。
- 収集(インプット)
- 情報の手入れ
- 忘却および選別
- 体系化(メタノート化)
- 発表(アウトプット)
この5つのステップを踏まえてトラベラーズノートの活用術を紹介していきます。
トラベラーズノートの活用術 メタノートの作成
収集(インプット)
ここでは、自分の興味をもったものを幅広く集める段階です。
この時に重要なのは、チャンスを逃さないことです。良いなと思った物で「次に見つけたら拾おう」と思っているものに限ってそれ以降見当たらないことが多々あります。
情報・思考では、周囲の人の会話の内容や散歩中にふと脳裏によぎったアイデアを逃さないようにすることです。
そのために常にメモ帳を持ち歩き、情報を逃さないようにすることです。
この時の気づきやメモは、以下のような「002グリッドノート」に書き連ねます。
この時の目的は、【情報の収集】ですので見た目や体裁にとらわれることなくガンガン書き込んでいってください。この段階で情報の取捨選択や整理を行わず、まずは自分が興味・関心を持った事項をただ集めていきます。
以下の写真は私の実際のノート例です。テーマも記入スタイルも別々ですが、とりあえず記録だけは残しております。
情報の手入れ
この段階では、【1. 収集(インプット)】で殴り書きした情報を少しだけ整理します。それは、例えばノートが途中までだった部分に加筆説明を加えたり、自分が重要だと思った部分にラインを引くなどの処理です。
この【情報の手入れ】を行うことで、ただの文字の書きなぐりに自分の感情を込めることができます。つまり、その【1.収集】で文字を書き込んだときに「自分が何を大事に思っていたのか」「どのような部分に着目していたのか」「何に感動したのか」といった、その当時の想いや心の動きを書き加えるのです。
この【情報の手入れ】は出来れば【1.収集】で記録してから1週間以内に行うことが望ましいです。何故なら時間が経てば経つほどに記憶は薄れていってしまうからです。逆にいうと、その時の心情を後で見返して思い出せるように情報を整えることが重要なのです。
以下の写真は私の実際のノート例です。重要だと思った部分にラインを引いたり、追加の情報を加えております。
忘却および選別
この段階で行うことは、ずばり忘れることです。ここまでにキチンと情報を書き残したのであれば安心して忘却しましょう。
ここでは、一度忘れることにより情報や思考を「熟成」させます。一度頭を冷やしてから再度眺めることで、前の時には気づかなかったコトに新たに気づくかもしれません。
そのアイデアを寝かせている間に、「発酵」が進み全く別の見方が出来て新たな気づきが得られるかもしれません。
そうしてある時、貴方の書いたノートをパラパラと見返したときに、これらの寝かしたアイデアや情報で面白いと思えたもの、更に深みを持った情報に出会えたのならば、それらのメモは「時間の選別」に合格した、本当に貴方が興味を持ち重要かつ面白いといえる情報なのです。
体系化(メタノート化)
ここで、時の選別を通り抜けた情報達を、再度一つのテーマとして整理しなおして”メタ”ノートを作成します。
『思考の整理学』における情報の”メタ”化を一部表現を変えて抜粋すると以下の意味を持ちます。
本当の整理とは、第一次的思考をより高い抽象性へ高める質的変化である。より高次へ思考を整理するには時間がかかる。寝させて、化学的変化が起こるのを待ち、そして化合したものが、それ以前の思考に対して、メタ思考となる
『思考の整理学』より
つまり、【忘却および選択】の過程を通過したものは、より高次の思考・情報となっている可能性が高く、今までの情報、知識や経験のエッセンスが凝縮された”メタ”情報なのです。
これらの情報を取り出してまとめたのが、「メタノート」である。
トラベラーズノート活用術 ではそのメタノートを別に用意した「013軽量紙ノート」にまとめます。
私が軽量紙ノートにまとめているのは、ノート一冊当たりのページ数が他のノートに比べて倍多いからです。私は1冊のノートになるべく多くの情報・知識のエッセンスであるメタ情報を持ち歩き、いつでも内容を見返せるように軽量紙を選びました。
また、メタノートを作る際には、見開き2ページで1テーマを記録します。これは後から情報の加筆や変更をするためのスペースを確保するためです。
以下の写真は私の実際のノート例です。重要だと思った部分のラインや図による説明など、より高次の情報を記録するよう心がけております。
発表(アウトプット)
ここでは、例として発表と記入しましたがこの段階まで来たらこのメタ情報をどう使うかは貴方次第です。
日常生活や業務で活用したり、研究者のように専門知識をまとめて学会や論文で発表するというのもあるでしょう。
これらの情報のアウトプット例の一つとして、ブログの記事作成に役立てております。
今までのノート写真から作成した記事の一例です。
最後に
トラベラーズノートは自由度が高いツールであり、その豊富なリフィルの特徴を生かす活用方法として「思考の整理学」的整理術を紹介しました。常にノートを持ち歩き、情報を逃さないように書き溜めて、時間による選別を行うことで大量の情報の中から本当に価値あるものを選別します。
トラベラーズノートは一生使える可能性を秘めたノートです。そのノートに日々の想いを書き連ねて、貴方の一生分の情報のメタ処理を行ったとしたら、、そこにはその人だけの「一生の結晶」が生まれるのではないでしょうか。
コメント